食品の安全性が叫ばれて久しくなります。食品の安全を語る際に考えなければならないのが、残留農薬の問題です。残留農薬は、食品添加物と違って、成分表示に記載されるわけではないので、知らず知らずのうちに体に蓄積されてしまいます。
こちらでは、世界における日本の残留農薬の実態を知ったうえで、有効な除去方法について考察していきます。
まずは残留農薬の実情を知ろう
残留農薬の実情を知らなければ、農薬除去の必要性を認識することができません。それで、まずは日本の残留農薬の実態を考えてみたいと思います。2009年の農林水産省の資料によると、農地面積当たりの農薬使用量は、1ヘクタール当たり13.2キログラムと世界的に見て多いことがわかりました。『関連情報 ... 食品分析会社 ... 株式会社キューサイ分析研究所』
イギリスが3.5キログラム、フランスが3.3キログラム、ノルウェーに至っては0.6キログラムであること考えると、農薬使用量の多さは否定できません。
日本の農地でこれほどまでに農薬が必要となる理由は、気候にあるといわれています。温暖多雨な気候で、作物の病気や害虫などが発生しやすく、生産物の品質維持を図るためにも農薬使用量が多くなっているようです。日本では、農薬使用量の多さが、残留農薬基準の甘さにもつながっているとの指摘もあります。
主要な農業生産国と比較してみると、中国以外は、日本よりも残留農薬基準が高いことがわかります。また、基準とする項目設定からも日本の残留農薬基準の低さがわかります。例えば、お茶の残留農薬基準では、すでに毒性が高いことが知られ、使用が禁止されているDDTやBHCといった、検出されないはずの項目が設けられています。
不検出となる種類の農薬を項目として挙げていること自体、甘めの基準だと指摘されても仕方がないかもしれません。日本の残留農薬基準は、食べてすぐに実害が出るほど危ない基準ではありません。毎日食べても健康被害が出ない程度のレベルは保たれていますが、世界標準で考えた場合、緩い基準であることは明らかです。
その事実を知ったうえで、除去方法を会得し、自衛策を講じるのが最善といえるでしょう。
下処理を工夫する
残留農薬を除去するのに有効な手段の一つが、農産物を食べる前の下処理を工夫することです。野菜の場合ですが、まず、流水で、少なくとも30秒以上かけて洗うようにします。残留農薬が残らないよう、こすったり、きれいなスポンジなどを使って洗うと効果が高くなります。
流水で一定時間洗ったのち、酢水か塩水に5分ほどつけておきます。酢水の場合は、酢と水の割合を1:2にします。塩水を使う場合は、塩の量を水の2パーセントほどにします。酢や塩を使って洗うと、残留農薬を除去するだけでなく、他のメリットもあります。
ゴボウや山芋などは、酢を使って洗うと、灰汁抜きができるからです。つけおきした野菜は、もう一度流水で洗うことで、残留農薬を落とせます。野菜の表面部分に残留農薬が残りやすいので、一番外側の葉をはがしたり、皮をむくのも効果的です。
葉物野菜などは、30秒ほどゆでてからにゆで汁を捨てることで、残留農薬を取り除くことができます。葉物は2センチから3センチほどの大きさに、ブロッコリーなどは房を分けて、水に浸る部分を大きくしてゆでると、内部に入り込んだ農薬が溶け出しやすくなるようです。
お米の場合は、酢や塩を使うことができません。しかも、お米の場合は、水に溶けやすいネオニコチノイドなどの農薬が使われるため、地下水にも農薬が浸透しています。また、近くにゴルフ場などがあれば、芝生を維持するのに使用される農薬の影響を受ける場合があります。
お米についた残留農薬の除去方法ですが、玄米の場合は、水につけておく「浸水」を行うことで、ぬか部分に付着している農薬を除去できます。まず、ミネラルウォーターやウォーターサーバーなど、きれいなお水を用意し、40度程度に温めます。
お水を温めている間に、玄米を流水で洗い流しますが、手のひらを使ってすり合わせるようにすると、浸水の効果が上がりやすくなります。洗った玄米を鍋に入れて、温めたお水を入れ、ふたをして4時間から6時間ほど浸水させると、残留農薬が水に溶け出します。
玄米をざるにとってから流水で洗い落とせば、残留農薬を除去できます。白米の場合は、精米した時点で8割の農薬が除去されています。それで、お米を洗い、30分から40分程度浸水させると、残留農薬は除去できます。
食品用の洗剤を活用する
洗剤は、食品には使えないイメージがありましたが、近年では野菜の農薬を落とすことができる洗剤が開発されています。なお、食品用洗剤は、スーパーなどで販売されているものもあります。農薬を落とす洗剤は、お米に使えるものも出ています。
お米を研ぐ前に、お米と水を入れた容器に洗剤を入れて、数十秒放置し、その後は通常通り、お米を研げばよいので、使い方は簡単です。
残留農薬の除去商品を使う
残留農薬を除去する製品は、日本ではまだそれほど一般的ではありませんが、世界的に見ると、幅広く使われているようになっています。世界でトップクラスの使用量を誇る商品は、野菜や果物の表面にスプレーし、水で洗い流せばよいだけという簡単さです。
除菌効果もあるので、まな板や食器洗い用のスポンジにも使えて便利です。水とホタテ貝の殻から作られたアルカリイオン水を使った残留農薬除去商品も登場しています。天然由来の成分で作られている点が、小さいお子さんがいる家庭などで評価されています。
こちらの商品も、残留農薬を除去することに加え、除菌や消臭効果が期待できるので、活躍の場が広がっているようです。電解イオン水が入った商品は、水洗いでは落としきれなかった残留農薬を数秒で落とすことができるとして、高い評価を獲得しています。
そもそも残留農薬が多い野菜を購入しないという選択も考慮する
残留農薬を除去することは大切ですが、農薬を使用していない、または低農薬の食品を購入すると、残留農薬除去と同じ効果が生まれます。「有機JASマーク」が付いた商品は、栽培する畑が2年以上前から化学肥料や農薬を使用していないなど、細かい条件をクリアしたものです。
国内で生産される農産物のうち、有機JASマークを取得しているものは多くありません。生産するのが大変な無農薬や低農薬の農産物は価格が高めですが、食品の安全を考える消費者の高い支持を受けています。さらに、生産者の情報が記載されている農産物の購入も検討できます。
農薬に関する生産者の考え方を理解してから購入できるのがメリットです。生産者情報は、スマホでバーコードを読み込むと、詳細を確認できるものが多くなっています。
残留農薬の除去方法はいろいろある
温暖多雨の気候の影響により、日本の残留農薬基準は世界的に見て緩いため、食べ物の安全性を心配する人が増えています。残留農薬を除去するには、野菜の洗い方など、下処理を工夫したり、農薬用の洗剤を使ったり、残留農薬除去商品を利用できます。
価格は高めですが、有機JASマークを取得している無農薬、または低農薬の農産物を購入することも、農薬除去と同じ効果をもたらします。